富裕層の教育

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1980年後半から1990年前半になりますが、台湾も”先進諸国に追いつけ追い越せ”で、子供の教育にも大変熱心でした。競争が激しく、学歴がそのまま仕事と収入につながるという現実も否定できないのは事実です。実際、日本も同じ道を通っていましたから。

しかし富裕層はもっと違う視点で、今後の世界を見通して、いつ何が起こっても対処できる教育を施しているように思いました。教育の視点が違い、常にリスクヘッジをしているという印象があります。

富裕層の普段の生活は質素です。語学学校に通っていたときに、ある製薬会社の重役の大学生の娘さんに日本語を教えたことがあります。台北市の市街地は基本集合住宅ですが、その中で戸建てで広い庭、家の造りからも海外からのお客様をよくもてなす家であることが分かります。しかし、普段の生活は多くの人達よりも明らかに質素であることは行くたびに感じました。余分なものはありませんし、質のいいものを大切に使っています。

教育に関しても語学は大切だと考えていることがよく分かるのですが、その目的は世間とは違うような気がしました。当時から、英語教育は幼い時から熱心だった台湾ですが、それは大学受験と将来の出世のためです。しかし、富裕層の教育をみていますと、語学は普段の生活で自然と必要なものとなっていました。

中国人はよく友人を家庭に招き、食事を一緒に取ります。幼い子供も席を一緒にします。そこには外国人客もいますから、自然に会話は英語や他の言語になりますし、マナーも身につけていきます。こういう場を通して、「言葉」ができなければ会話ができないことを子供ながらに自然に学んでいます。食事が終われば、大人は大人で子供は子供同士に別れ、それぞれの時間になりますが、言葉が通じない相手と一緒に遊ぶことによって、何が必要か、何をすれば相手に喜んでもらえるかということを子供自身が自分で気づく環境になっていると思います。言葉が違う国の人と遊ぶには何が必要かということを子供なりに考え、自分で身につけていくわけです。だから、夏休みの夏期講習に参加して英語を勉強するにしても、その背景と目的が幼い時から違っているような気がします。

先の製薬会社の娘さんの家庭でも普段からお客様が多く、娘さんも幼い時から自然と何が必要か分かっていたと思います。相手とコミュニケーションをとるには言葉以外にも何が必要か分かっていたはずです。語学、スポーツ、音楽がコミュニケーションに必要と聞いたことがありますが、まさにその通りだと思います。言葉ができなくてもスポーツと音楽で楽しむことができます。

台湾で感じたことを簡単にですがまとめてみました。

目次

勉強したことは誰にも盗まれない

戦争が起これば、戦争でなくても持っているものは全てなくなる可能性は誰にでもあります。そのときにどう生き延びるかということを普段から考え準備していると思います。物質的なものは何かがあったときに失い、失ったら終わりですが、勉強して身につけたことは誰にも奪われません。何が起こっても失われないもの、ゼロになっても自ら生きていく力を大切にしていると思いました。

アメリカンスクールに入学

裕福な家庭の子供はアメリカンスクールに通っていました。当時の学費は一か月10万円でした。私は4年近く日本人学校の近くに住んでいましたが、日本人学校の道路を隔てた隣にアメリカンスクールが移転し、常に日本人、中国人、アメリカンスクールに通う子供たちを見ていました。国の教育でタイプが変わるなと感じます。

兵役を課せないために海外留学

当時、男の子は兵役が課せられていました。兵役につかせたくない親は高校から海外に留学させ、そしてその国の国籍を取得していました。

リスクヘッジ

中国との関係や一つの国家として認められていない、国が安定していないので、いつ何があってもいいようにリスクヘッジはしていました。富裕層ほど、何かがあったときに海外に逃げられるように準備していて、それも親戚皆が同じ国に拠点を置くのではなく異なる国に行き、いつどこで戦争が起こっても巻き込まれないようにしていました。

貴金属で身を守る

本で読んだことがありますが、満州国で日本人はせっせと貯金していましたが、雇われていた中国人はお金がたまると金を買っていたそうです。満州国が崩壊するとお金はただの紙切れとなり日本人は困ったけれど、金を買っていた中国人は換金すればよいので身を守ることができたそうです。

台湾の人も貴金属は買っていました。リスクヘッジのためです。これは富裕層だけではなく、一般の人もです。

生活の知恵

古典に通じている

これを一番感じたのは会社で中国から来た技能実習生と接したときでした。これに関しては書籍を紹介しながら、技能実習生に触れるときに書いていきます。

まとめ

富裕層は国が安定していないということもあり、常にリスクヘッジをしていること、モノは盗まれたら終わりだけど、勉強したことは誰にも盗まれないという哲学があること、言葉を変えれば、それだけ歴史に通じているということです。どこの国でも生きていける術の基本が語学とコミュニケーションですから、これは国に関係なく富裕層の共通点でもあるような気がします。

生活も大変質素です。幼い時から目を肥やし、余分なものは買わず、質のいいものを手入れをして大切に使っている印象も強かったです。

真の富裕層の生活スタイルや考え方は学ぶことが多いです。