前回、日本に留学、就職した50代の女性について触れましたが、今回は来日10年以上の中国人医師をご紹介します。
先生も学生時代に文革の影響を受けましたが、地方ではなかったので有名校で妨害を受けず勉強はできました。(地方とは全然違うようです)大学に進学する資格はなかったものの、勉強はきちんとして常にトップクラスの成績でした。確か高校生の時に文革が終わり、大学に進学できるチャンスができ医大に進学したとの事。
医大卒業後、中国で就職、結婚・出産を経て30代で日本に来て、ゼロから日本語を学び現在に至っています。日本に来た目的は学位を取得するためであり、確かにその目的は達成できたものの、「日本に来てよかったですか?」の問いには「分からない」との答えでした。「今更中国に帰っても自分の居場所はない。大学の同級生は皆病院などのトップにいる」と、中国に帰っても自分の居場所が全くなく、日本での道も険しいけれど、もう自分は日本でやっていくしかないという複雑な思いが感じられました。ご自分の留学によって、ご主人と息子さんを中国に置いてきたのですから、今までの犠牲を考えれば、日本で自分が選んだ道を歩むしかないのかもしれません。
日本に留学し日本で仕事をしていることが、本当に自分にとってよかったのかと言えば、「帰国すればよかった」という言葉を発してはいませんが、彼女からは複雑なものを感じました。失ったものの方が多かったかもしれません。
留学して、そのまま就職というと格好よく思えますが、精神的に満たされるかと言えばそれは難しいように思います。決して収入が多いわけではありませんし、前回も書きましたが、若い人材は毎年次々と中国からやってくる、日本語はできて当たり前となると、苦しいことの方が多いと思います。
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私は今本当に日本に帰ってきてよかったなと思います。確かに日本になじむまで時間はかかりましたが、やはり同じ国籍の人が周りにいると安心できました。親元に戻って1年半ほど経って、ようやく熟睡することもできましたし、親がいると風当たりが全くないので、こんなに楽な場所はないと思いました!(笑)
台湾にいたとき、年齢の近い子と話すのはもちろん楽しかったですが、不思議なことに小学生の日本人の子と話をした方がホッとできたことを覚えています。(だから留学生が同じ国同士でいたいのもとても分かります)年齢は違っても同じ国の教育を受けた者同士、たとえ相手が小学生でも母語が同じ方がホッとできるのです。これは人によってかもしれませんが・・・。
どちらがいいかは分かりませんが、母語で話をできる環境はありがたいものです。外国に出たからこそ言えることかもしれませんが、日本はとてもいい国だと思います。若い時は老後は海外でと思ったこともありましたが、やはり日本が一番です。私の場合は日本に帰ってきて本当によかったです。